【ライブレポート】摩天楼オペラ ”15th Anniversary Tour -EMERALD-” 日目-追憶の摩天楼- (大阪MUSE)
2日目-真実を知っていく物語-
我々が再び足を運んだのはOsaka Muse、摩天楼オペラの結成15周年記念ツアー-Emerald-の大阪公演2デイ初日から24時間も経っていなかった。
初日ではバンド初期の曲や往年のヒット曲にフォーカスした選曲がされていたが、2日目の”真実を知っていく物語”では今現在の摩天楼オペラを象徴する楽曲が多く披露される。
この名前は彼らの最新アルバムのリリース後に決定したのだと言う。つまりこの日のライブはバンドがこれまでの経験を通して到達した新たな次元をファンにお披露目する為の機会だと言える。
コンセプト通り、摩天楼オペラはファンにこのライブでは沢山の新曲を発表すると確約した。バンドが現在の編成になってから初のアルバムなので、その言葉は現実となった。
この日のライブ2日目公演は、前日の初日公演よりやや早めの時間に始まった。
我々が会場に到着した時には既に多くのファン達が入場する為に列を作っており、前日の同時間帯の光景との既視感を禁じ得なかった。
唯一の違いは、ファン達が身に付けていたのが黒地に緑の模様が入った今回のツアーTシャツだったと言う事だ。
この日は物販スペースで緑のペンライトが売られており、多くのファンがこの限定グッズを手に入れようと早くからOsaka Museに集まっていたことが容易に想像出来た。
入場後は、通例のように少し待機時間があった。
会場中にカメラが設置され、様々な事情からライブに直接駆けつけられなかった世界中のファン達に向けてオンラインで様子を配信する為に技術スタッフが作業しているのに気付くまで少し時間がかかった。
ショー開始予定時刻数分後、照明が幾分か和らぎ、お馴染みとなった開幕を告げる音楽が流れ始めた。
ステージはまるで雷が落ちているかの様にストロボでチカチカと照らされ、まるで全てがスローモーションになった様だった。
ファン達はまるで楽団の様に音楽に合わせて手拍子をし、摩天楼オペラメンバーの登場を盛り上げた。
苑~sono~がキッカケとなり最新曲”真っ白な闇がすべてを塗り替えても”のイントロが始まるまでの数秒間の静寂、会場内の期待感は最高潮に達した。
ステージが淡い照明に照らされる中、ファン達はほぼ自動的に彼に向けて腕を広げ、曲の世界に没入して行った。
愛する人を喪った哀しみについて歌うこの曲は力強く美しい、完璧なバラードだ。
”真っ白な闇が全てを塗り替えても 私だけ消えない”
この日、メンバー達が纏っていたのはステージとの相性もバッチリの白と黒の衣装だ。
会場後方からはまるでその様子は白黒写真の様だった。そう、曲のテーマである情熱を込めたラブレターの様に。
ソロの時、彩雨~ayame~と優介~yusuke~が互いに立ち位置を入れ替えたりしてこの日のハイライトのひとつを演出していた。曲の最後、優介~yusuke~は最後の1音まで宙を仰いでいた。
間髪入れず、響~hibiki~がドラムを叩き始めた。ショーはまだまだこれからだと言う事だろう。
この日2曲目は”零れ落ちていく未来”だった。
先程よりテンポの速い曲だったので、ファン達はメロディーに合わせて力一杯ノリ始めていた。
続くのはEPChronosより”Anemone”だった。
ヘビーなイントロだけでなく、苑~sono~の独特な歌唱法と1度聞いたら頭から離れない歌詞で更にファン達は魅了された。
“あなたに会えてよかった 君に会えてよかった”
苑~sono~がこの部分を歌っている間、ファン達は止めどなくステージに向けて腕をうねらせていた。
“赤い糸は隠したまま”でOsaka Museの温度は更に上がった。彩雨~ayame~のキャラクターと彼のキーボードから奏でられる魅惑的なメロディーのお陰だろう。
燿~yo~も客席側に近付いて更なる手拍子を煽っていた。
“RUSH!”、”Diorama Wonderland”で大阪会場はヘッドバンキングで満ちたブっ飛んだ世界に様変わりした。摩天楼オペラメンバー達まで響~hibiki~の激しいドラミングに合わせて頭を振っていた。
“RUSH!”の耳に残るメロディーと”Diorama Wonderland”のクラシックなシンフォニーでバンドの最もダークな1面を発見する事が出来、この日披露された彼らの引き出しの多さの一端を楽しむ事が出来た。
“Silence”が始まった時、もう陰鬱な空気が流れていた。
この悲痛なバラードはゆっくり進行して行った。
重いギターリフと重なり合うキーボード彩雨~ayame~のドラマチックなキーボードの解釈に印象的なパーカッションの演奏が合わさる事で、苑~sono~の歌唱力がより引き立てられていた。
長く厳しい冬の後に吹く春のそよ風の様に、次の曲”桜”は我々の心の中のしこりを溶かした。
まるで桜の葉の様に、ファン達は曲に合わせて注意深く手を動かしていた。
この様な事からも、摩天楼オペラファンには多種多様な人がいる事が良く分かる。
苑~sono~がアウトロでアカペラで歌唱するまでの間、燿~yo~のベースが主役の座に輝いていた。
次の曲が何なのか考える隙も無く、”残された世界”の壮大なイントロが鳴り響いた。
曲の終わり、境目も無しに本アルバム収録のインスト曲、”黒い海”に切り替わって行った。
優介~yusuke~の劇的なギターソロに会場中の視線が釘付けになっていた。
心地良い音色がOsaka Muse内を反響していた。
彼が正式にギタリストとしてバンドに加入してまだ数ヶ月だが、摩天楼オペラのエッセンスを吸収し、更に次の次元へ昇華させる彼は歴代最高のギタリストの1人と言っても過言では無いだろう。
会場奥の方から水が滴る僅かな音が聞こえ、ファン達にペンライトの出番だと告げた。そう、水滴の音がしたと言う事は続くのは”終わらぬ涙の海で”が始まると言う意味だった。
摩天楼オペラの凄いところはライブにおける細部までのこだわりだ。曲順だけ見ても、”黒い海”の後に”終わらぬ涙の海で”を持ってくる辺りも水に関係のある曲が2つ続いており興味深い。
ファン達はここぞとばかりに取り出したペンライトに青の光を灯し、左右に降りながらその場面を彩っていた。
我々が摩天楼オペラに行ったインタビュー内でもメンバー何人かが述べていたが、この曲には今現在の彼らが凝縮されている。納得という言葉以外見当たらない。この曲の中に全て揃っているからだ。
切れ味の鋭いギター、力強いドラム、ミステリアスなベース、耳に残るキーボードに圧倒的迫力の歌唱力。
これら全ての融合を生で見られるなんてこれ以上無い幸せだ。
続く”悲しみは僕への罰”では更に期待が高まる。優介~yusuke~摩天楼オペラ加入後初の彼による作曲だからだ。
アップテンポな曲調にも関わらず、想いを言葉に出来なかった痛みや後悔などを歌ったヘビーな曲だ。
非常に美しく感動的なパフォーマンスだったのでOsaka Muse内の全員の心が1つになり、皆涙が見せない様に必死だった。
バンドの最も切なくドラマチックな一面が垣間見えた。
大多数のファンがじっと曲に聞き入り味わおうとしていた程だった。
ここでポジティブな曲調の”流星の雨”が始まると、先程までの物悲しい気持ちは一瞬で吹き飛んだ。
摩天楼オペラの面々はこの日曜夕方で最もファン達の近く、ステージの縁まで近付いていた。
何人かのファンは再びペンライトを取り出し、まるで流れ星の様にOsaka Museを彩っていた。摩天楼オペラは”儚く消える愛の讃歌”で我々を更に元気付けた。
この曲のパワーメタル調のメロディーを聞いたのはこの時が初めてだった。あまりのファン達の盛り上がり様から愛の力やバンドがパフォーマンスを通して届けるエネルギーといった不可視の物まで具現化した様だった。
2022/09/04 大阪MUSE
15th Anniversary Tour -EMERALD-
DAY 2 – 真実を知っていく物語ご来場の皆様ありがとうございました。
次回、9/30〜10/1新宿BLAZEでツアーファイナル開催です✨✨♪摩天楼オペラ – 儚く消える愛の讃歌 pic.twitter.com/mLhOtZ5ckZ
— 摩天楼オペラ Official (@opera_staff) September 4, 2022
そしてアンコール前最後の締め括りとして披露されたのは、ツアータイトルでもあり彼等の最新曲、”真実を知っていく物語”だった。Osaka Muse照明スタッフの働きで会場内はエメラルドグリーン1色に染め上げられた。
ファン達とバンドの結束は非常に硬く、メンバー達はしばしば演奏を中断して微笑み、その美しい場面や会場中に満ちる充実感を噛み締めていた。
何てクライマックスだ!その後、摩天楼オペラはバックステージに一旦戻り休憩をとった。
バンドの面々が今ツアーの公式Tシャツを身に付け戻って来るまでそう時間は多くかからなかった。
最初にマイクからこの記憶に残る週末を一緒に過ごしてくれてありがとうと礼を言ったのは苑~sono~だった。
全員がこのツアーの感想や、大阪で作った思い出を語り合った。
メンバー同士が気を許し合い、仲良さげに話していた。
ここでお待ちかねの燿~yo~による撮影会が始まった。この日の思い出を不朽の物にする為メンバー達が話している様子を写真に撮っていた。
優介~yusuke~が初めて髪色を変えた様だ。彩雨~ayame~や苑~sono~はツアーの最初で染めていた。
彩雨~ayame~の方からツアーに合わせて緑のアイテムを身に付けてくれてありがとうと感謝を伝えた。
そして新宿で開催されるツアーファイナルに向けて何か緑の物を持って来る様に言い、全員笑いながら手を叩いていた。
休憩が終わり、苑~sono~が次の曲について説明し始めた。
ここ数年演奏していなかった曲で、今ツアー中でも名古屋と札幌でしか披露していないのだと言う。
苑~sono~がタオルを取り出し、それに倣ってファン達もほぼ同時に同じ事をした。
「次の曲、frill。」
ファン達は苑~sono~に導かれる様にタオルを力一杯振り回し始めた。
曲が終わる時、苑~sono~は挑発的な口調で次の曲も付いて来られるか尋ねた。
ファン達はもちろんだ、と言わんばかりに興奮気味に拳を振り上げた。
“Adult Children”のイントロで既にファン達はこれまでに無い程のエネルギーで跳び始めた。
苑~sono~が「Can you f*cking feel me?」と叫び、ファン達は拳を高々と掲げた。
響~hibiki~が大阪公演最終日を盛り上げる為に爆発的なドラムプレイを見せ付けていた。
そして”PHOENIX”の番がやって来た。どんな事があっても再び灰の中から蘇る彼等摩天楼オペラ自身について歌う曲だ。
ファン達は腕やペンライトを使ってサインを作り、ステージに向けて投げかけていた。
曲が終わるとメンバー達は楽器を降ろし、微笑みつつ大阪会場に駆け付けたファン達とのかけがえの無い時間を楽しんでいた。
しかし、響~hibiki~はドラムスティック手にラストスパートをかけ、ライブが終わるのを惜しんでいる様だった。
しかし…苑~sono~は「One More?」と尋ねた。
ファン達は文字通り歓喜に浮き足立っていた。
メンバー達はヒソヒソ声でこの週末最後に贈るボーナスをどの曲にするか話し合っていた。
再び楽器を手にした彼等が演奏し始めたのは”Curse Of Blood”だった。
ダブルアンコールの衝撃からかファン達は以前以上に活気を取り戻し、曲が終わる頃には先程のタオルで汗を拭いていた程だった。(笑)
バンドには耳をつん裂く様な拍手が贈られた。
この最高な週末の有終の美を飾る事が出来、彼等も満足そうだった。
そうしてライブが終わると、ファン達はグッズやお土産を購入する為に走った。
東京でのツアーファイナルも大盛況で、10月30、31日に2022年末や2023年中頃に向けてバンドの今後の予定を解禁した。
その大部分がバンド結成15周年企画第二弾、”the Waltz tour”についてだった。
新たに春、2ヶ月に渡って16日程が追加された。
ツアーのコンセプトは今回と同じで、1日目は定番曲などを中心に、2日目は最新アルバム収録曲中心に披露されるそうだ。
まだお気に入りの曲を聞くチャンスが無かったそこのあなた、2023年のこの機会をお見逃し無く!
耳寄りなのは、ツアーファイナル会場がZepp Hanedaだと言う事だ。
2020年のオープン以降彼等が同ライブハウスでワンマンライブするのは今回が初めてになるのだと言う。
間違えなくこれまでに無い経験になるだろう。それだけで無く当日は彼等の16周年記念日だ。
まだ少し先の話ではあるが、ゴールデンウィーク期間中の開催となるので是非この機会に会場に足を運んで頂きたい!
お持ちの配信サービス等で摩天楼オペラの最新音源も是非チェックして欲しい。
最近ファンになった方も、ベテランの方も…
この”真実を知っていく物語”は摩天楼オペラの多角的な音楽性が楽しめるいわばマスターピースになっており、比較的最近からのファン、16年ずっと彼等を応援し続けているファンなど全ての人に喜んで貰える内容だ。
2023年も彼等の創作活動から目が離せない。次の発表を楽しみに待つ事としよう!
【セットリスト】
1.真っ白な闇がすべてを塗り替えても
2.零れ落ちていく未来
3.Anemone
4.赤い糸は隠したまま
5.RUSH!
6.Diorama Wonderland
7.Silence
8.桜
9.残された世界
10.黒い海
11.終わらぬ涙の海で
12.悲しみは僕への罰
13.流星の雨
14.儚く消える愛の讃歌
15.真実を知っていく物語
-EN-
16.frill
17.Adult Children
18.PHOENIX
19.Curse Of Blood
- (カメラマン:Gin G. Personal Instagram/Photography Instagram)
- (翻訳:T.小澤 )