D=OUT (ダウト)はビジュアル系の中でもかなり長い期間活動し続けているバンドの内の一つである。実際、今回我々NIPPONGAKUが光栄ながら取材する事が出来たショーはバンド結成15周年ライブツアー「フラッシュバック」(十五周年単独公演TOUR’22) だ。
ライブ会場となったのは大阪を代表するライブハウスの一つ、OSAKA MUSEだ。もうこれだけで今日のショーは忘れられないものになると確信出来る。
オーディエンス側に客席が用意されていたのだが、今回はあまりの来場者の多さに立ったままライブを楽しむファンの姿も何人か見られた。
バンドの活動期間の長さを物語っているように、幅広い層のファンがいるのが印象的であった。
様々な年齢の人が見られたうえ、ファッションに関しても派手な色の服、全身黒のモノトーンの服など皆思い思いの装いをしていた。
イベントは、舞台左側へプロジェクターで投影されるダウトのこれまでの15年の歩み、メンバー紹介と今回のツアーの概要の説明と共に始まった。
ステージ上、垂れ幕の向こう側から”フラッシュバック” (ツアータイトルと同名)のイントロが聞こえ始める。
幕が上がるまで30秒近くあったが、ファン達は振りを踊るのをそれまで我慢出来なかった様だ。
幕が上がり、幸樹が客席側に背を向けて姿を現したところで、真にライブが開始される。
幸樹と玲夏がオーディエンスに向け“いくぞ!いくぞ!いくぞ!”と盛り上げ、続きへの期待を高める。
オーディエンスが音楽に合わせて踊り始めたものの、ダウトのメンバー達はまだ盛り上がりが足りないと思ったのか、会場中が一体になろう、と言わんばかりに客席奥を指差し始めた。
幸樹が地面から出来るだけ高く跳べ、と言っている!
徐々に音量が下がっていき、色とりどりの照明と相まって我々の目をよりステージに釘付けにして行く。
ブレイクダウンをひとしきりしたところで、曲は力強いシャウトと共に終わった。
照明が熱狂的に、パレットのありとあらゆる色で会場中を照らし始めるが、幸樹にだけは濃い青色の光が差していた。
片手で空を指差し、もう片方にはエコーを効かせたマイクを持ちつつ、幸樹が我々にバンドの代表曲の一つ、”シャングリラ”の開始を告げる。
ユニゾンのところでメンバー全員、そしてオーディエンスまでもが一緒になって動いている。
こんな事は信じられない!観客とバンドが何の練習も無しに一緒になって踊れるなんて、日本でしか見ることが出来ないに違いない。
威吹が会場の盛り上がりに大層満足しているのか、頭がおかしくなる、と身振り手振りで伝える。
ひヵると玲夏は曲中立ち位置を変え、会場中の注目の的となった。更にギター&ベースソロで更にファン達を熱狂させていた。
会場一体となっている様子がその場にいる全員が心の底から楽しんでいると言う事を物語っていた。
今回の周年記念ライブでは、冒頭から勢いのある曲が披露されたが、続けても代表曲”感電18号”が演奏された。
祭りの楽しげなリズムにつられて皆が手拍子で曲にのっていた。
幸樹が愉快なリズムに合わせ、“いけるか大阪!”と叫ぶ。
玲夏が幸樹がその瞬間を楽しめる様に、リフレイン部分のコーラスのサポートをする。その後、幸樹と一緒になって踊り、祭り(曲)のフィナーレにはステージ中央で一緒になった。
ライブに来てくれた事、そして15年間バンドを応援し続けてくれた事に感謝の気持ちを述べる。
関西をツアーで巡るなら、是非ともOsaka MUSEでイベントを開催したかったと言う。
開幕以降、あまりに激しいセットリストを演奏仕切ったからか、威吹は上着を脱ぎ、次以降に備えていた。
このライブでは、コロナ禍で溜まった鬱憤を晴らそうぜ、と頼む。
嫌な事を忘れる為のカタルシス(デトックス)にしよう、と。
玲夏がベースのチューニングを終えたところでMCは終わり、会場中央のミラーボールからの照明の反射に呼応する様に、Osaka MUSEで土曜夜の熱気が高まって行く。
15年も共に演奏し続けて完璧にシンクロしているからか、”Sunrise”中ずっと全員一緒に踊っていた。
リフレインの間、盛り上げようと客席に向けて照明が投げかけられ、 ひヵるはずっと微笑んでいた。
突如、レーザービームの様な照明が差し、場の雰囲気がガラッと変わった。
“万国、大東京”で、更にサウンドの鋭さは増していき、会場中が曲に合わせて頭を振って(ヘドバンして)いた。まさにロックだ。直人 (Dr.)は余裕の表情で、片手でスティックを回しつつもう片手のみで演奏していた。
幸樹はマイクスタンドを刀の様に持ち、構えていた。
電話の保留の時に流れる様な音楽が流れ始め、全員が次の曲が”あいするひと”であると悟る。照明が、まるで春が訪れたかの様に緑に染まっていく。
ベースの音が、他の楽器より力強く、会場中に鳴り響く。
先程までとは打って変わり、バラード曲が始まる。
幸樹がありがとう、と言い、続いてのバラード”青い鳥”が始まる。今回はより演歌を意識した歌い方をしている様だ。
そして再び玲夏が主役になり、直人のドラムに合わせジャズ系のリズムにのってスラップ(チョッパー)していた。
客席では、季節が春から夏に進んだ様に皆の心がほぐれている様だった。
心の距離が近付いて行く。この歌は我々の深いところにある感情を呼び覚ます..
幸樹の堂々とした、極上の歌声を楽しめる曲だ。
会場中から熱烈な拍手が送られた。
続く”Rebirth day to u”もバラードではあるが、もう少しアップテンポだ。
今回のフィーリングは夏というよりより秋の様に感じられた。
彼らの演奏の耳触りの良さ、円熟味が垣間見えた。
頭上から差す光に照らされ、ダウト全員がステージの向こう側が見えなくなるほど集中している様に見えた。ゆったりしたテンポの曲であったにも関わらず、観客がメロディーに合わせて腕を振り始めた。
バラードは一旦置いておいて、突如ギャングスター(マイケルジャクソンのSmooth Criminalをイメージして欲しい)を彷彿とさせるようなSEが流れ始め、その間にメンバー達は水分補給をして一息ついていた。
幸樹が三味線を肩に掛け、それを見ていたファン達は次の曲への期待を高まらせた。
続けて彼はライブを楽しめているか、と問いかける。そして、彼らの曲の中には演奏するには難易度が高い為集中が大いに必要となるものも多いと言う。
ここから演歌系の曲が続くと告げる。全員が演奏を始めた。
“歌舞伎デスコ ”は、日本歌謡などではお馴染みの“おいおいおいおい”の合いの手と共に勢いを増して来た。
歌舞伎ショーが始まった!
サウンドの中で、三味線の鋭い存在感が感じられ、玲夏に促されたファン達が幸樹に向けて頭を振り始めた。最後には跳び始めた。
照明は濃い朱色に変わり、皆の注目は三味線を持つ幸樹に集まった。そして、ファン達は即興で彼の周りに集まり、まるでステージから発せられるエネルギーを受け取っている様に腕を広げていた。
幸樹が三味線を下ろす。
直人が力強く”JAPANESE DOGEZA“のイントロを叩き、我々を歌舞伎劇場からアンダーグラウンドパンクのライブハウスへと誘う。
観客はかつてない程に沸いていた。
幸樹も一緒になって跳び始めた。
(あまりにも曲がアップテンポ過ぎて記者自身もメモを取る手を止めて一緒に踊り出すのを堪えなければならなかった…)
まさにその瞬間においては、ダウトには世界の時間軸と言う概念が通用しないのではとまで思わされた。
ほんの少しの旋律だけで聞く者を江戸時代から現代の2022年まで連れて来れるのだから。
幸樹と玲夏が何度も何度も“踊れ!踊れ!踊れ!“叫び始める。
だがこの曲の盛り上がりはまだそんなものでは収まらなかった。幸樹は膝を突きいつまでもヘッドバンキングをしていたし、威吹は虚空を殴っていた。
これこそがパンクだ!
幸樹はマイクで自分の心臓を刺し、床に盛大に崩れ落ちた。
歪んだギターリフが鳴り響き、照明が真っ赤に染まったところで”MUSIC NIPPON”が始まった。そして会場の熱気が高まって行く。ファン達は両腕を高く掲げ、再びバンドからのエネルギーを受け取ろうとしていた。エネルギー充填の後、幸樹自身もミリタリーの上着を脱ぎ捨て、まだまだいけると言わんばかりにクシャクシャにし始めた。
ドスの効いた声で”鬼願”の始まりを告げる。
リフレインが始まる数秒前、幸樹とオーディエンスがお互いに”Fuck you!”と言わんばかりに中指を立て合っていた。これこそがパンクだ。
間奏の間、幸樹が客席左側に降りて来て観客と踊り、跳んでいた。しかし、客席奥の方にも注意を向けながらだ。
曲の最後はシャウトと共に終わる為、喉の調子を整える為咳払いをしていた。
その場にいた全員がアンコールがあると知っていたものの、次が最後の曲になると告げる。
彼らの人気曲”一世風靡ファクト”が始まり、メンバー全員がリラックスし、砕けた様子で踊り、ふざけ合い楽しんでいた。
ここに来てベースが会場の空気を引っ張り、割れんばかりの手拍子と交互に掛け合いをしていた。
ダウトのメンバーがステージから退場して行く。“アンコールコール”の時間だ。コロナ禍以降、Osaka MUSEでは観客がアンコールコールをしている様子の録音を流す様になったそうだ。コロナウイルス対策により会場内での会話が禁止されている為、これは皆にとってありがたい話だ。手拍子で演奏に応える事は出来てもやはり言葉にして伝える事と比べると物足りなさが残る。
録音が止まり、照明が真っ青に染まると幸樹がピアノの音色と共に一人で現れた。そして”生にしがみつく”をアカペラで歌い上げた。
ほとんどの観客は、まるで劇場で劇を見ているかの様に座って耳を傾けていた。
上記で紹介したうちの三曲を季節に例えたが、この曲は間違えなく冬だろう。これで春夏秋冬全て揃った。
どこか冷たい、切ない感情が感じられた。ピアノの最後の数音が鳴る中、残りのメンバー達もステージに出て来た。
全員が15周年記念グッズを身に付けている。
ここに来て全く毛色の違う曲調の”オドロ”で再び会場に熱気が戻って来た。
50年代のキャバレー風のメロディーが聞こえた瞬間、全員立ち上がった。祭り系の逆襲だ!
幸樹が会場中の注目を集めつつステージ中央に現れ、扇子を開くと桜の花びらの様に紙切れが舞った。威吹が、幸樹がパフォーマンスに集中している間にステージの主役の座に踊り出て、その眼差しとギターリフでオーディエンスを魅了していた。
伝統音楽のセットリストは続き、次は歌舞伎のエッセンスを取り入れ”メンバーコール”に突入した。
幸樹がパフォーマンスで、ラストスパート向けて注射器を手に取り、オーディエンスのエネルギーを注入しているかの様な動作をした後、疲れ切った様子で地面に崩れ落ちた。
歌舞伎風パフォーマンスは劇中よく見られる“ワハハハ”という大笑いで終わる。
ここで、メンバー一人一人がステージ中央で自己紹介して照明に照らされる。幸樹が“サテライトTVの曲入りの為に”One, two, three!”とカウントダウンする。曲中、ほぼ全てのビジュアル系のライブで見られる様にオーディエンスが会場中を右へ左へと動き回りながら振りを踊る。
幸樹が良くやったと彼らを褒める。
幾つか言わなければいけない事があります…
ひヵるが関西にとても感謝しており、このライブハウスには思い出が沢山あると言う。“この15年間とても楽しかった、これからの10年間も同じ様に過ごしたい!”
メンバーとオーディエンスは皆笑っていたが、彼は出来るに違いないと答える。玲夏はその場にいる全員が家族と同じだと言う。彼らの間で関西弁で冗談混じりに話始めた。
威吹がダウトは歌舞伎、演歌、ブルースなど様々なジャンルから影響を受けていると言う。偶然かも知れないが、丁度その後に演奏された曲、“失神”で丁度今威吹が話していた事を垣間見る事が出来た。
移り変わって行くリズムの中で、幸樹が観客もダウトと一緒になって楽曲を作り上げて欲しい、と英語で“Clap your hands!”と言っていた。
その後、残念ながら今度こそ最後の曲の番が来た。バンド結成15周年祭を締め括る最後の曲に選ばれたのは“花咲ビューティ”だ。
玲夏と威吹が主役の座を取り合う様に掛け合いをしている。ファン達はそれに手でハートの形を作って応えている。
メンバー全員の楽器の音が一斉に鳴り止み、最後にはダウトもう一人のメンバー、幸樹の声が響く。
観客は拍手喝采だ。愛のこもった別れの挨拶の後、来年の16周年ツアーへの期待を我々に残して幕が閉じた。
来週はダウとのメンバーとのインタビューを行う。
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- (翻訳:T.小澤 Instagram)