Kikuo World Tour 2026
Kikuoland: Above All Bounds
2026年2月28日、NIPPONGAKUはバルセロナで行われたKikuoのライブに足を運んだ。本公演はワールドツアー「Kikuoland: Above All Bounds」の序盤にあたる一夜。しかし会場に入った瞬間、それが単なるツアーの一公演ではないことはすぐに伝わってきた。
Kikuoがスペインを訪れるのは今回が初めてではない。2025年の「Kikuoland: Go-Round」に続く再訪となり、今回のツアーではバルセロナ公演に加え、翌3月1日にはマドリード・La Rivieraでも公演が行われている。
会場に向かうと、すでに長い入場列ができていた。印象的だったのはその規模だけではない。鮮やかな衣装や個性的なスタイリング、そしてコスプレに身を包んだ人々。その光景は、Kikuoの世界観がそのまま現実に広がったかのようだった。
フロアに入り、物販エリアを抜けると、Hoshi-kunとTsuki-chanの姿が目に入る。象徴的なマスコットの前には写真を求めるファンの列が絶えない。ライブが始まる前から、この空間はすでにひとつの体験として成立していた。

20時ちょうど、ライブはスタート。
ステージに現れたKikuoは、トレードマークのマスクで表情を隠したまま。それでも観客の反応は一瞬で爆発した。ペンライトが一斉に揺れ、期待と高揚が会場全体に広がっていく。
1曲目は「君はできない子」のツアー限定リミックス。
メロディカの音が鳴った瞬間、空気が切り替わる。パイロが噴き上がり、フロアもスタンドも無数の光に包まれる。背後のスクリーンにはサイケデリックな映像が映し出され、音と完全にリンクしながら観客の感覚を一気に引き込んでいく。
「Chiri Chiri Juso」では重低音が体の奥に響き、インダストリアルなサウンドが空間を支配する。「Svaahaaの声」では鋭いストロボが走り、「Rainborn Menoko」ではリズムの変化と和の要素が交差し、楽曲の物語がより鮮明に浮かび上がった。
「Kara Kara Kara no Kara」の後、Kikuoは短く自己紹介を挟む。そのわずかな間さえ、このライブの流れの中では印象的に残る。

中盤に入ると、「カエルの踊り」で一気に加速。テンポが崩れ、歪みながら広がっていく独特のグルーヴが会場を包み込む。「Sight, Noise, Life and the Earth」のパートでは、映像と音が絡み合い、現実との境界が曖昧になっていく感覚があった。
続く「Triplights」では、この楽曲が約20年前、大学時代に制作されたこと、そしてニコニコ動画に投稿後わずか1時間で削除されたというエピソードが語られる。その背景が、今鳴っている音に新たな重みを加えていた。
「学校を休んだ日のこと」で空気は一変する。
静かで繊細なサウンドの中、白いペンライトがゆっくりと揺れる。観客はその流れに身を任せながら、自然と音に溶け込んでいった。Kikuoの表現の幅広さが、この一曲で強く伝わってくる。
その後のMCでは、これまでと同じくTTS音声で語られる軽やかなトーン。しかし内容はどこかユーモラスで、日本では同じようにはできないと話す。そして実際にマイクを取り、「こんにちは」と一言。歓声に包まれながらも、その瞬間に観客との距離が一気に縮まった。再びTTSへ戻る流れもまた、Kikuoらしいコントラストとして印象に残る。

ワールドツアーを重ねる中で、ライブの完成度やファンとの距離が変化してきたことへの実感と感謝。そしてその流れの中で、「新曲をプレゼントします」とサプライズが告げられる。
披露されたのはデモ音源。インストは完成しているものの、ボーカルはまだ仮の状態で、ピアノの音でメロディが表現されていた。その未完成ささえ、この空間では特別な意味を持って響いていた。
終盤、「愛して愛して愛して」が始まった瞬間、会場の空気が一気に変わる。
赤い光が広がり、サビでは観客全体が声を重ねる。その熱量は、この夜のピークだったと言っていい。

「UFO」「天国でいこう」「My time」と続き、「ごめんね ごめんね」ではKikuoの持つダークな側面がより強く表に出る。それぞれ異なる温度を持ちながらも、すべてがひとつの流れとして自然につながっていく構成だった。
ラストは「そして君は月になった」。
曲の途中でHoshi-kunとTsuki-chanがステージに登場し、フィナーレへ。紙吹雪、バルーン、スモークが一斉に広がり、最後まで勢いを保ったまま駆け抜けた。
約2時間の本編を終えても、アンコールは止まらない。
再びステージに戻ったKikuoが披露したのは、「愛して愛して愛して」のインストバージョン。観客に歌うよう促し、会場全体がひとつの声になる。この光景は、日本ではなかなか見られないものだと語るKikuoにとっても、特別な瞬間となっていた。

最後にバルセロナへの感謝を伝え、ステージを後にする。
あの夜に重なっていた音と光、そして感情。
それらは簡単に言葉にできるものではない。
ただひとつ確かなのは、そのすべてが、そこにいた一人ひとりの中に今も残り続けているということだ。
