シェルミィ。2021.12.19 @大阪MUSE
まず最初に、このライブは我々にとって特別な意味を持つ。なぜならこのライブリポートがNippongakuによるメディア上で最初の公式な投稿だからだ。
その記念すべきライブとは2021年に大阪MUSEで行われた(“五重の塔”ツアーファイナル単独見世物公演「五憎六負」)である。
驚いたことに、ニューシングルとそのPV(プロモーションビデオ)の発表も兼ねていた。
シェルミィは、2013年に大阪で結成されたV系(またはビジュアル系、以後はV系と表記)の影響を色濃く持つバンドである。
V系だけでなく、歌詞やメンバーの衣装、メイクから見られるように日本におけるメンヘラカルチャーからの影響も持ち、それを牽引している。
他の国内バンドとも友好的な関係を築いており、豹によるR指定とのコラボや友我の所属するもう一つのバンド、NIGAIの様にメンバー各自がシェルミィの活動以外にも様々なアーティストと精力的にソロプロジェクトを行っている。
以前も話題に挙げた事があるこの名高いライブハウス、大阪MUSEは、大阪、そして関西中のV系カルチャーが集まり、新進気鋭のルーキーから誰もが認める実力派までが音楽的交流を行う場所である。
ライブ当日、まだ夕方5時であったにも関わらず入場口や廊下まで溢れるほどショーを心待ちにするファンでごった返していた。
ここまでの来場者数があったのはこの場所始まって以来だ。
午後5時半になると幾つかの赤い照明が灯され、会場の熱量と共に音楽のボリュームも上がっていく。
ギグは観客の割れんばかりの拍手と共に始まった。
最初に爻(dr)がスティックを手にステージ上に現れ、それによって更に会場のボルテージが上がる。
そうしている間にも凌央(ba)、友我(gt)が次々と現れ、最後に豹(vo)が客席に背を向けながら出て来た。そして振り返りつつ「俺たちがシェルミィだ」と発し、真のライブ開始が告げられた。
シェルミィのライブでは必ず毎回衣装に何かしらのテーマが設けられているが、今回は学生服、そして以前雑誌“Zy.”にて着用の赤チェックズボンが選ばれたようだ。
爻が場を盛り上げたことで、客席はライブに全力で臨む準備が整ったようだ。
セットリストの第一曲目は「平成メンヘラセオリー」だ。豹がオーディエンスに向けて中指を立て、彼らもヘドバン(リズムに合わせて頭を振る)しながらそれに応える。
更には、リフレインの間、会場中が一体となり「メンヘラ!」のハモリに合わせて跳び、その後リストカット(自傷行為)を模した動きをしていた。
曲が終わる際も、豹はファンに向けて「大阪!」と叫びながら場を盛り上げていた。
読者の方々はもうご存知だろうが、新型コロナウィルスの影響で観客はコール&レスポンスに応えられないのでシェルミィのロゴの1つであるツノを手で表してステージ上からのパフォーマンスに応じていた。
ファンが「非ノーマル」に合わせて踊るために扇子を取り出した。
シェルミィのライブで1番興味深いのは、彼ら自身の音楽的多様性に加えてファンの楽しみ方の多様性である。
「非ノーマル」の曲中、あまりのギターソロの素晴らしさに友我は開場中の注目を集めていた。V系のライブでは欠かせない、彼に向けて両腕を広げるといった場面も見られた。
一息ついて水を飲んでから、豹は来場者に対する感謝を述べ、今回のツアー、そしてここ数年は良い思い出が沢山あると言う。
その間、雨の様な音がバックで流れていた。
先程にバンド、そして彼個人の人生の過去5年の軌跡を振り返ったのだと言う。
雨の音に笑い、続いて今回のギグで最もセンチメンタルな時間が始まる。
照明が雨の様な模様を伴いながら青に変わる。
豹が次の曲のMVに倣って傘をさし、よりステージはドラマチックに彩られていく。
「哀しい日はいつも雨」冒頭の最初の数音がピアノで奏でられる頃、豹は観客にこの曲は心を開いて良く聞いて欲しい、と頼む。
それにより、ファンは曲中ずっと静かに聴き入っていた。
「哀しい日はいつも雨」から始まり、「黒猫」やその他の代表曲を幾つか披露した後、「白昼夢の後、雪」がその日最後のバラード曲となった。
バンドはここで小休止をとり、その間バックではコメディ調の音楽が流れ、その後のパフォーマンスに向けて会場を温めていた。
豹はここで改めて挨拶をし、コロナ禍が過ぎたらもう一度全国ツアーをする気でいる事、そしてこれからも彼らの好きな音楽を作り続けていくと言った。
砕けた様子でメンバー間で雑談をし、その中で関西弁の話もしていた。
MCが終わると、豹は先程挙げたバンドロゴうちの一つであるツノの手をかざし、「かかってこい!」と、この次の曲がアップテンポなものである事をほのめかす。
和風なリズムにのせて「パライゾ」が始まる。
観客は溢れんばかりの力で振りを踊っていた。
手拍子、振り、飛び交う扇子のお陰で本当に熱狂的な瞬間であった。
このライブでボルテージが最高潮に達したのは間違いなく「過食性障害嘔吐」であろう、皆がヘドバンで頭を振り乱していた。
バンドはステージ上を動き回りながらパフォーマンスをし、客席中がリズムに合わせて頭を振りつつそれに応えていた。
リフレインの間、凌央はこの曲のテーマである“吐き気”をもよおしているかの様な動作をする。だから曲中ずっと照明が緑で灯されていたのかも知れない。。。
「優しい世界」曲中、客席は先程と変わらず盛り上がっていたが、シェルミィのメンバーは更に煽る。
豹は客席に降りて左から右へとサーカスの様に動き回っていた。とても愉快だ。
豹がギターを担ぎ、「リストカットベイビー」が最後の曲だと告げる。。。
赤色の照明が会場を貫く。
最初の何小節かは豹の声と彼の弾くギターだけが響き、彼が叫ぶのに呼応する様に残りのメンバーも演奏を開始する。
充分な休憩をとった後、爻がステージに再登場し、オーディエンスに“大阪、まだいけるか?本当にか?”と問いかける。皆を盛り上げるためにドラムソロを披露したが、それが終わるとすぐに舞台を後にした。
数分後、遂にシェルミィ全員が戻ってきた。
ファンは、そんな彼らを鳴り止まぬ拍手で迎え、見事に「ヒューマンゲート」を演奏した。
豹は会場中を指差し、友我のところで手を止めたと思うと、彼のギターテクニックに夢中になっている様に両腕を広げ歩み寄った。
豹は、彼らは今までもう何年もV系バンドとして活動して来て、音楽を通して自己表現が出来る事が幸せだと言う。
色々な事を頭で考えているけれど、これ以上説明は要らない、気持ちで通じ合っている事を信じていると胸の打ちを明かす。
大阪MUSEにはバンド結成初期から恩義があり愛着を感じているとも説明する。
豹は、一度に色んな瞬間を思い出したからか思いが溢れ出す。
シェルミィは本当の意味でファンと通じ合う事が出来るバンドだ。
そしてまた曲が始まる。豹が先程に続き涙ぐみつつ「大嫌いな貴方のために」を歌い出す。
シェルミィの皆が制服姿で豹を元気付けようと囲む。まるで卒業式での最後の別れの様だった。
「平成32年へ」でライブは締め括られ、メンバーが別れの挨拶をする中幕が閉じた。
ファンが呼吸を整えて拍手を始めるまでの間、深い静寂が広がっていた。
間違えなく、その場にいた全員が今回のライブはずっと思い出に残ると確信したに違いない、そう、つい後からYouTubeで何度でも繰り返し見てしまうような。
しかし。。。まだショーは終わっていなかった!
シェルミィはまだ我々が予想していなかった贈り物を用意していたのだ。
会場の左側に、彼らの新曲「如月駅」のMVが投影された、一般公開に先立ってだ!
ビデオだけでなく、2022に開催予定のツアー日程まで公開された。
ファンはここまで未公開情報を大量に発表してくれた事への喜びと感謝の印に感激の拍手を贈る。。。
突如幕が開き、シェルミィが先程見たばかりのMVと全く同じ格好で再々登場した。
大阪MUSE内に再び熱気があふれ、その光景は最早言葉で表せないものであった。
シェルミィからファン全員に向けてのクリスマスプレゼントだったのだろう。
「如月駅」のどこか寂しげな曲調がこの様々な感情で溢れた夜の最高の締め括りとなった。
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