ザアザア × gulu gulu 「晴れたらいいなツアー2022」@大阪MUSE【ライブレポート】

今回我々が幸運にも取材する事が出来たのは“晴れたらいいなツアー”の記念すべき第一回目公演だ。フライヤーから見てとれる様に、本ツアーはザアザア主催、guluguluがゲストのツーマンだ。
NIPPONGAKU読者の皆さんは既に良くご存知であろう大阪における音楽シーンの定番、大阪MUSEが会場となった。
この日のライブはまるでツアータイトル“晴れたらいいなツアー”により深い意味を持たせる様な、そんな特殊な状況下で開催された。
運命と言うべきか、ライブ当日は信じられないほどの大雨だった…。
会場が解放されショーが始まる直前までの降雨の為、非常に多くのファン達が傘を手に大阪MUSE近辺に殺到していた。

8年間ザアザアとして活動している主催者の彼らはこの日幸運に恵まれていた。この日の天気はまさに文字通りザアザア降りの雨だったからだ。
まるで天候そのものもライブの演出の一部の様だった。
バンドが度々使用するロゴ、更には彼らを象徴する“雨に殺される”“雫”の様な楽曲の世界観までをもこの日の気象状況は表していた。

ここから見れる様に、ザアザアの楽曲はメタルな曲調に低音ボーカル、ビジュアル系の影響を色濃く受けた衣装、そしてまだ解決されていない問題や自分の手に負えない状況について歌う歌詞が特徴だ。
先程にも挙げた“雨”その物がその良い例だろう。予定を台無しにし、憂鬱な気分にさせ多くの人から好かれていない雨は、様々なビジュアル系バンドから比喩表現として用いられている。

イベントのトップバッターを務めたのはgulu guluだった。
彼等はここ最近のV系の中でもビジュアル、音楽面においてかなり独自のスタイルを築いている。
メンヘラカルチャーやヘビーなロックサウンドからの影響に加えて、デスボイスや血肉沸き立つ様なサウンドによって邦楽界でも異質な存在感を放っている。
更に、美化されている様でその実態は不条理だらけの現代社会に向けられた痛烈な批判を含んだ歌詞も相まって、国際的にも非常に多くの注目を集めるニューカマーとして躍り出た。

大阪MUSEの話に戻るが、何十人もの“一葵推し”と書かれたTシャツを着た“中毒者”(ザアザアファンの総称)達が悪天候をもろともせずに会場を満たしていた。
今回のツアーはツーマンの為、この日は多くのファンが両バンドのグッズを身に付け黒色コーデで集っていた。

映画などで、町にサーカスがやって来る場面で良く聞くような音楽が流れ出した頃には既に17時になっていた。
それだけでなく、誰かの乱れた呼吸と非常事態を知らせるアラームも一緒に聞こえており、これから起きる事への期待をどんどん高めて行った。

遂に大阪MUSEの幕が開かれ、イベントの開始が告げられた。最初に我々の目を惹いたのはメガフォンを手にしただった。
gulu guluは、ステージにいるだけで会場を熱狂の渦に包む事の出来る数少ないバンドの内の1つだ。彼らの演奏を聞く者はその世界観に引き込まれ、まるで我々の今存在するこの世界から彼らのショーと言う全く別の空間に連れ去られている様だった…
gulu1 - ザアザア × gulu gulu 「晴れたらいいなツアー2022」@大阪MUSE【ライブレポート】 - NIPPONGAKU 開幕に選ばれたのは有名曲「変なメリーゴーランド」だった。最初を飾る曲に相応わしい鉄板曲だ。
ステージから発せられる凄まじいエネルギーの前では、すぐに会場中のファン達(ザアザアのファン達も含む)はヘッドバンキングをし始めるのを堪えられなくなった様だ。
gulu guluのメンバー達も音楽に合わせて動いていた。オーディエンスをも凌駕する勢いでだ!
もう少しで曲が終わるかと言う時、哀はマイクを使いまるで絞首台に吊るされているかの様に演出し、その演劇の様なパフォーマンスで観客の目を釘付けにしていた。gulu2 - ザアザア × gulu gulu 「晴れたらいいなツアー2022」@大阪MUSE【ライブレポート】 - NIPPONGAKU「「 」-まっしろ-」で更にその場の空気は盛り上がった。
哀はオーディエンスにその場でバンド名を暗喩する様にグルグル回転する様に促した。
哀が突如衣装のフードを被り、その様子はまるで恐ろしい見た目をした赤ずきんの様だった。
リズムは更に熱狂的な物になって行き、大阪MUSE中が端から端へと踊っていた。(記者もメモを取りつつほんの少しだけヘッドバンキングをして気分を落ち着かせていた…(笑))
曲中、おとぎ話の世界の様なメロディが流れ、哀はまるで人形使いの様にオーディエンスを指揮し、操り人形の様にヘッドバンキングを促していた。gulu3 - ザアザア × gulu gulu 「晴れたらいいなツアー2022」@大阪MUSE【ライブレポート】 - NIPPONGAKUその後、「轟音とニードル」のイントロでがマイクで自分自身を殴った。
藍珠はずっと不気味な笑みを浮かべており、その様子はまるでジョーカーを彷彿とさせる様だった。
この曲が一番伝統音楽からの影響を色濃く持つ物だった。が祭りの掛け声の様に“ソイヤソイヤ”と叫んでいる間、オーディエンスはリズムに合わせて跳んでいた。
gulu4 - ザアザア × gulu gulu 「晴れたらいいなツアー2022」@大阪MUSE【ライブレポート】 - NIPPONGAKUMC中、ファン達に向けてこのツーマンに来てくれた事への感謝を述べる。2年ぶりの共演であったからだ。
は興奮しつつ、これまで何度もオファーを受けていたにも関わらず様々な事情が重なり一度も実現に至っていなかったと説明する。
哀の一人劇には感嘆させられた。彼がパソコンのキーボードを叩いている様子を再現している間オーディエンスは皆笑っていた。まさに本当に錯乱した人物の様だった。
MCの終わり、5月25日にリリースされたばかりのニューシングル「宙吊り少女」が続いての曲だと告げる。

「宙吊り少女」の曲中、螢ちゃんの激しいドラムは文字通り我々の心(心臓)に響いた。
まるで後ろからパレードに着いて行っている様な場面だった。全員がそのメロディに魅了されてサーカスに導かれている様に。

 先程の流れに続き、はまたメガフォンを取り出した。
前がサーカスに人を呼び込む場面であったならば、今回はまるでもう到着し、何人が着いて来る事が出来たのかを確認している様だった。「汚れた豚」だった。

「左手はスナッフフィルム」の曲中、凛人が魅惑的なリフでオーディエンスの目を盗んでいる間、藍珠はベースでリズムを支えていた。
gulu5 - ザアザア × gulu gulu 「晴れたらいいなツアー2022」@大阪MUSE【ライブレポート】 - NIPPONGAKUリズムからか、その時にはもう既に我々もgulu guluのサーカスの一部になっている様に感じられた。

は再びフードを被り、Rubraを歌う為に椅子に腰掛けた。まるで我々に何か怪しいおとぎ話を語る大道芸人かの様に見えた。

今回のイベントでは、まだリリースされていない時期シングルの収録曲を聞く事ができると言う特権に恵まれた。
「ハッピーバースデー」が始まると、を照らす照明以外全て暗転した。
藍珠の奏でるベースはの歌声と共に反響し、曲の最後にはどこかおぞましい雰囲気の誕生日パーティーを連想させた。

オルゴールの音が段々と大きくなっていく間、僅かな灯りが大阪MUSEのミラーボールから反射していた…「首輪教育のすすめ」
間違えなくこの瞬間がライブのピークであったに違いない。
gulu guluの素晴らしい演奏とファン達が狂った様に踊っている様子が合わさった事によって場の空気がガラッと変わり、我々をあらゆる抑圧から解き放つようなカタルシスが感じられた。
ラストスパートのところで哀がリーダーとしてのカリスマをもって拳を天に突き上げ、全員が恍惚に浸った。
その感情を表すのに言葉は不要だった。
gulu6 - ザアザア × gulu gulu 「晴れたらいいなツアー2022」@大阪MUSE【ライブレポート】 - NIPPONGAKU「嗅覚障害」でまるで催眠術をかけようとしているかの様に再びメガフォンを手に取り、一方藍珠と凛人は交互に立ち位置を変えていた。
その場にいた全員が我を忘れるほど興奮していたのは間違いない。
螢ちゃんは恍惚に浸っていた。ドラムを叩きながら哀のデスグロールをコーラスで支える事が出来たからだろう。
低い声で哀はラストと言い、メガフォンから悲しい事に次がこの狂気に向けて突き進む旅の終着駅だと告げる非常事態の音が聞こえて来た。 gulu7 - ザアザア × gulu gulu 「晴れたらいいなツアー2022」@大阪MUSE【ライブレポート】 - NIPPONGAKU「変なメリーゴーランド」が始まり、大阪MUSEは完全に祭り会場と化した。
最後にもう少しだけ頑張ってくれとオーディエンスに投げかけている様子から、先程話したサーカスの仲間探しはもうとっくの前に終わっている様に見えた。なぜならその場の全員が既にこのショーの、つまりgulu guluの一部であると感じていたからだ。

演目の最後まで息を吐く間も与えられなかった。

メンバー達がステージからはけて行く間、小さな子どもの歌う演歌がBGMで流れていた。
螢ちゃんはショーの初めに鳴っていたのと同じ警告音が鳴り響く中、最後にステージを後にした。gulu8 - ザアザア × gulu gulu 「晴れたらいいなツアー2022」@大阪MUSE【ライブレポート】 - NIPPONGAKUguluguluの凄まじいショーの後、先程までの素晴らしいライブを噛み締めつつザアザアだけに集中する為に数分間設けられた。

18:15頃であろうか、突然電子音楽のBGMが流れ始め、幕が上がっている間に聞こえ始めた警告音と共に徐々にフェードアウトして行った。
メンバー達は赤い光の中、既に各々の位置に着いていた。亜ん(Dr.)はアンプと同様にCAUTIONと書かれたテープに包まれたドラムセットに腰掛けていた。零夜(Ba.)はステージ左側、春芽(Gt.)は右側、そして一葵(Vo.)は中央に立っていた。

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https://twitter.com/xaaxaa_official/status/1466726412636016641

ポップなメロディーと一葵の囁きで“毒チョコ”と共に彼らの出番が始まった。
サビの終盤、日本ではそこまで主流ではないスカの要素を感じれるメロディーを確認する事が出来た。ファン達はユニゾンのリズムに合わせて跳び、間も無くそれは会場全体を巻き込んでのヘッドバンキングへと変わって行った。

“タバコを下さい”は大阪MUSEの空気を180度変えた。攻撃的でヘビーなリズムはオーディエンスに一瞬たりとも息をつく間も与えなかった。
それを見た一葵かかって来い大阪!と叫び、続いて腹の奥底から絶叫する為に床に転がった。
一葵のシャウトはコーラスを担当する零夜のそれと交わり、二人のハーモニーが次の音の爆発に向けて我々を沸き立てた。

- ザアザア × gulu gulu 「晴れたらいいなツアー2022」@大阪MUSE【ライブレポート】 - NIPPONGAKU
https://twitter.com/Reiya_xaaxaa/status/1523230454572535809/photo/1

恐らく“黒い猫ちゃん”がこの日の盛り上がりの頂点であった。
零夜のスラップと亜んのドラムプレーに加え、オーディエンスの手拍子によってリズムはどんどん加速して行った。
一方一葵はと言うと、文字通りデスボイスと“黒い猫ちゃん”の声を交互に歌い分けて狂気に染まって行った。
曲が更に熱狂的な盛り上がりを見せ、我々もメモを取る手を止めて踊り出すのを堪えている中でも一葵の存在感は唯一無二に感じられた。

続いての演目はバンド初期からの有名曲、“ワタシ=エトセトラ”だった。生で聞く事が出来たのは素晴らしい経験だった。
曲調そのものは明るかったが、歌詞に合わせて照明も落ち着いたものになっていた。

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https://twitter.com/an_xaaxaa/status/1516008091732434945

ステージが暗転し、ザアザアメンバー達は数秒間客席に背を向けた。
MCの間、guluguluとの残り三公演の日程を再度発表した。
音楽を通じてこんなに遠く来る事が出来たとその場にいた全員に感謝を伝えた。
彼等の口調は穏やかで、聞くもの皆に安心感を与えていた。

4月30日、丁度ゴールデンウィークの始まりに開催されたこのライブでのザアザアのセットリスト選びの中でも特に計算されている様に思えたのは“五月病”だ。
日本人の皆さんにとっては常識だろうが、“五月病”とは大型連休ゴールデンウィーク後にいつも通りの生活、職場に戻るしんどさ、面倒臭さを表す言葉だ。
零夜春芽は交互に立ち位置を変え、その間一葵は今年もまた五月病がやって来ると歌っていた…。
亜んはそれに全力でドラムを叩き応えた。

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https://twitter.com/haru_xaa/status/1500799937831124995/photo/1

この感情はセットリストと言う枠を越え我々の心の中に残った。ライブは残す所後一曲のみとなり、いつも通りの生活に戻る時間が近付いて来た。

“ラストダンス”では、もちろんフロア中が踊り狂っていた。
有終の美を飾る為、ファン達を喜ばせようと一葵春芽は二人身を寄せ合い、皆それを見逃さなかった。

まさにこのパーティーはこの日にこの大阪MUSEで開催されるべくしてされたと言っても過言では無い。ミラーボールがピカピカと反射し、オーディエンスはユニゾンに震えていた。
guluguluposter - ザアザア × gulu gulu 「晴れたらいいなツアー2022」@大阪MUSE【ライブレポート】 - NIPPONGAKU
熱気に溢れたクライマックスの後、幕が閉じた。そして会場から出た時雨が上がっている事に気付く。
“これからも晴れが続いたらいいな”、そう心の中で呟いた。
このライブに来た人は、お陰で今年はそれほど五月病に悩まされなかったに違い無い。- ザアザア × gulu gulu 「晴れたらいいなツアー2022」@大阪MUSE【ライブレポート】 - NIPPONGAKU

もっとgulu guluについて知りたいですか?
来週彼等とのインタビューを予定しています。
コメント欄で彼等への質問を受け付けているので、是非!

  • (カメラマン (gulugulu): ラミ)
  • (翻訳:T.小澤 )
  • (Assistant staff: Manuel)
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